西本きよらさんインタビュー

 カンボジア・バッタンバンの孤児院を支援する
「オークンすまいるプロジェクト」という団体を設立した「西本きよら」さん。
美術教育と美術を使って支援するという、将来のビジョンなどを伺った。

西本きよらさん画像

―子供達に教えようと思ったきっかけを教えてください。

昨年(2014年)二回カンボジアに訪れました。近代芸術の授業でカンボジアはポル・ポト政権のときに文化人や知識人が大量虐殺され、文化がゼロになった国だと聞き、その真実を見たいと思ったからです。

―悲惨な出来事でしたね…。私も記憶に新しいです。

はい。そしてカンボジアの現状なのですが、芸術大学に芸術専門の教授はいない上に美術の授業もなく、美術館もないような現状です。ですが、自主的に子どもたちに似顔絵を描いてまわるとみんなキラキラの瞳で喜んでくれました。

―西本先生は子供が大好きなんですね。他に同じような活動をされてる方には出会いましたか?

現地では伝統織物で村を実際に復興している人や無料で美術を教えている人にも出会い、文化が人や社会を活性化させることができるのだと教えられました。子どもたちと関われば関わるほど彼らの賢さや感性や能力に圧倒されます。しかし、誰かがそれを引き出していかなければ誰もそれを知らぬまま最悪は社会に潰されて生きていかなければなりません。なぜならインフラも教育も整っていないカンボジアに、海外から彼らを利用する人はたくさん来ます。私は教育と美術でそれを少しでもなんとかしたいと思ったのです。

―ありがとうございます。質問が少し変わりますが西本さんにとってのアートとはなんですか?

範囲が広いですが、自分の心を落ち着かせるためにあるものでもありますし、家族や友人に喜んでくれるようにと作ったり描いたりしてもその時間は素晴らしいものですし、みんなで何か一つの物を作るも、作ったものをみんなで共有し合うのもアートの形だと思います。また、誰かが作ったものに対してほかの誰かがその作品を通して何か思ったり、作者のことを想ったりすること、怒りでもなんでもいいから心に働きかけるものがアートだとも思います。これらのあいだには言葉は必要ありません。

 

ーアートは世界がつながるきっかけの一つですね。
また西本先生が子供達に教える上でのご自身の特技や自分の魅力はなんだと思いますか?

正直、絵を教え始めたのは最近ですから授業や指導を模索し始めたばかりでもありますが、私は頭や心の中の世界を広げる時間を取ることを大切にしています。

ー大切な時間ですよね。

そうですね。私は幼い頃から話すことが苦手だったのもあるせいか、その分、頭や心の中でたくさんのことを想像、空想していました。それらを広げることはアーティストに近くなるとかそういう事ではなくて、想像力や感性を高めます。想像力は、生活を幸せにする魔法にもなるし、相手の身になって考えたりするなど様々な可能性に繋がります。

ー作品を生み出す一番の力ですね。

もちろん、想像力も大切だと思うのですが共有する事の大切さや物を大事にすることも今は教えています。道具や材料は一人一つとありません。本当は一人一つあればもっと伸び伸びとできるかもしれませんが少ないものをみんなで分け合う心はもっと大事です。兄弟三人いてお菓子が一つしかないならば三等分する。幸せを共有することを大切にしてほしいと考えます。

ーなるほど。他に教える上で大切にしていることはありますか。

汚れることや自分の手や全身を使って伸び伸びと描くことを楽しめるような授業作りを大切にしています。また、今はカンボジアのたくさんの自然や溢れたゴミを使って教材研究をしています。自然と共存するような美術教育を考えていきたいと思います。

ーぜひとも私も西本先生に教わりたいです。そんな西本先生の授業中の雰囲気を教えてください。

ありがとうございます(笑)授業中はカンボジア語と英語が飛び交います。必ず現地の先生を巻き込んで先生が技術や指導や美術についてともに考え学ぶ機会を作っています。子どもたちはいつも元気がよく、毎日学ぶ意欲が強いです。初めて見るものが多い為、キラキラな瞳で真剣に黙々と、完成すればとびきりの笑顔で私の元まで来て「できた!!」と誇らしげに見せてくれます。完成した作品は大事に自分で持っておいてね。と言うと「いいの!?やったー!」と言って笑顔で持ち帰る姿は本当に嬉しいです。

西本きよらさん画像

ー子供の笑顔は自分自身をも笑顔にしてくれますよね。教えていて良かったと思ったことはありますか。

子どもたちの成長を見ることができた時と現地の先生から嬉しい言葉をもらった時です。先週教えたことを次の週に自分なりに応用して使っていたときは驚きました。学びを次に活かすことを知っていました。とにかく私の持っている技術を吸収しようと意欲的な子どもがたくさんいます。子どもたちに引き出されています(笑)

ー子どもたちの憧れの先生ですね。現地の先生はどのような方々なのでしょうか。

現地の先生が、「あなたはまた何年かここに来れなくなってしまうけれど、あなたから教えてもらったことは私が受け継いでしていくわ。」と言ってもらったときは大変嬉しかったです。一時的に絵を描きに来た人、で終わってしまうことは私にとっても全く意味が無いからです。

ー西本先生の子どもへの愛情が先生方にも伝わっているのですね。西本先生の将来の夢はありますか。

私の将来的な目的はアーティストの発掘ではなく美術教育による支援をすることです。たくさんの人に美術教育や美術が楽しくて必要なものだとまずは伝えたいのです。現地の先生のその言葉は私の将来的な支援の継続を許可してくれたようで、日本で教師になっていない私ができることは少ないかもしれないと不安になっていた心をなくしてくれました。

ーどんな指導方針がありますか?

教育は私にとって生きるために必要です。子どもたちに、自分の夢や思いを何ものにも邪魔されないで生きていってほしいと思っています。
常識や狭い世界の話は教える気はありません。子どもたちの小さな疑問や仕草や表情を見逃さないように指導していきたいと思っています。そのために教えるというよりかは引き出せる教師になりたいです。

ー素敵な夢ですね。ちなみに生徒さんからどのような先生と言われますか。

カンボジアではよく「おもしろい」「クレイジー」「優しい」と言われます。日本では「優しい」「絵が上手」などと言われています。どちらも共通しているのは「二十歳に見えない」です(笑) 小さい頃から「大人になっても絶対に子ども心を忘れない!」がポリシーだったのでいいのですが(笑)子どめの目線は忘れないようにしたいです。

ー生徒さんからの先生からも愛されてますね。言葉で一番嬉しかったことや感動したことは何かありますか。

たくさんあります!選び切れませんが、再会の時に子どもから男の子の高校生まで遠くから笑顔で走って「シスター」ではなく「きよら!待ってたよ!」と言ってきてくれたときは、彼らにとってお客さんの一部から少し抜け出せたかな?と思え嬉しかったです。

ーありがとうございました。最後に教えている子供たちや今から教える子供たちに向けて一言なにかあればお願いします。

毎日あなた方に恋に落ちています。生かしてくれてありがとう。一緒に生きることを楽しもうね。

【教室基本情報】
カンボジアに一年間留学中。現在はバッタンバン州のノリア孤児院にて。

連絡先
 電話:国際電話なり。
メール:Kiyora.nishimoto@gmail.com
住所 カンボジア バッタンバン州 日本は福岡

*西本さんのご経歴
福岡県立太宰府高等学校芸術科 油絵専攻
高1「青少年アンビシャスの翼」22期生 キングズウッドコース班長
高2「青少年アンビシャスの翼」og会実行委員長
高3 「日本次世代リーダー養成塾」9期生
福岡教育大学初等教育教員養成課程美術専修
大学一年「cmcスタディツアー」でカンボジアを訪れる。大学2年「在福岡カンボジア王国名誉領事館 半田スカラシップ」でカンボジアの美術と教育を知るために再度カンボジアを訪れる。帰国後、仲間と「オークンすまいるプロジェクト」という団体を作り、バッタンバンの孤児院を支援中。
カンボジアで将来的に美術教育と美術を使って支援がしたいと思い、現在「官民協働事業 トビタテ留学JAPAN」2期生で、その支援の方法を模索中。

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