ポスカを用いて描くのは何と仏画!
廣瀬勲慧アナンダ先生は僧侶でもありますが、仏画を教えていただける先生でもあります。普通仏画は日本画の岩絵の具などの特殊な画材で描かれますが、先生は15色のポスカで極彩色の仏画を描きます。それは古代遺跡の壁画を彷彿とさせるような鮮やかでパワフルな色合いです。
今回は仏画教室に関することから先生の今後の展望について、お話を伺いました。
―何の分野でも一部の人しか経験出来ないことを、一要素加えて沢山の人に広めるという構図がありますが、まさか「仏画」との掛け合わせに「ポスカ」が選ばれるなんて!と誰もが驚くひらめきだったと思います。
もともと先生にとってポスカは画材として身近に使用していたものなのでしょうか。それとも仏画を始めるにあたってさまざまな画材を試していたのでしょうか。
私は大型量販店(アブアブ・ダイエー等)に於いて化粧品,ランジェリーファンデーションを始めとして多く女性に接する職場の担当でした。後に生鮮食品、利益をコントロールするスーパーバイザー・仕入れバイヤー・アパレルデザイナーと経験する中で、広告宣伝も自らが手掛ける事も必要に迫られ進めてまいりました。そしていつも身近にあったものがマジックインキやポスターカラーやポスカであったのです。膨大なショーカードを書いたものです…。
その様な中でポスカは筆記用具であったのですが、暇を見つけてはこのポスカで昆虫や昭和初期のポスター等も趣味の領域で描くようになったのです。元来絵は好きでありましたから、油彩・水彩は描いておりましたが、仏画を始めるにあたり、美術界に於いて芸術家の先生方が全く見向きもしない「ポスカ」を画材として取り上げたのです。全く新しい事を開拓する。これほどスリリングな事はありませんものね。
当初、個展等を開催致しますと、芸術家の先生や多くの方々からポスカで描くが故に、「何だぬり絵か」と陰口を言われたものです。幸い親しい友人の力添えや励ましもあり、活動も9年余りとなった訳です。絵具を色々試した訳ではありません。経験の中からポスカにたどり着いたのです。そして発心したのです固定観念や既成概念を取り払った新しい仏画の世界を。
お教室で描かれる仏画は、油絵などで使用されるキャンバスを木枠に張らない状態で描かれるので完成形はタペストリーのような状態。均一に塗り上げていくだけでなく、時折水筆を使った表現などちょっとしたテクニックで作品を引き締めていきます。時には既成のポスカのペン先よりも細い表現が必要になることもあり、その時には線の周囲の塗り色で一度描いた線を塗り潰すような方法も!
たった15色のポスカで仕上げたとはすぐに気づけないような多彩な表現で一つの作品が仕上げられていました。
ーさまざまな年代・業種の生徒さんがお教室にいらしていますが、皆さんの共通点などはありますか?また、生徒さんの最年少と最年長のご年齢(年代でも結構です)を教えてください。
仏画は難しいもの、やってみたいが近寄りがたいものという観念を捨て受講されている方々は、皆様意志は強くお人柄は穏やかという共通点が見えます。(中には不思議ちゃんもおります)年齢範囲は26歳~74歳です。
―お教室一門で国立新美術館で開かれるチャリティー展への出展を控えていますが、今後のご自身やお教室の作品発表の可能性についてどのように考えていらっしゃいますか?建築物の建具や壁画など、大きな画面で眺めることができたらさぞや圧巻の光景だと思うので見てみたいですし、画材が堅牢なので屋外の展示でも、極彩色が引き立って美しいだろうなと思いました。
受講生の作品発表会(一門展)は、1年半毎を目途で開催致しております。その中から受賞者・プロが育てばと考えております。
私自身はネパールに渡り、以下の事を生涯の仕事にしたいと考えております。
現在、ネパール ナガルコトの地にゴールデンテンプルの建設計画が進んでおります。(7880㎡既に土地は取得)敷地内に孤児院・養老院・職業訓練所・仏教大学を設け、寺院には講師として赴任、寺院の壁面の全てに私の仏画を施し、仏画寺院として開山する事です。そのためのチャリティイベントを駐日ネパール大使館の協力を得て開催したのですが、3.11東日本大震災・原発事故と重なり思った成果が得られませんでした。
なんと既にこんなに大規模な計画が進んでいたのですね!
―画材と題材がかけ合わさって可能性が無限大に広がる先生の仏画ですが、ここで先生がおっしゃっていた「永遠の創造性」というキーワードについて、もう少しお話いただけますか?
「永遠の創造性」 そうです仏画はそれを私に与えてくれました。以下、少々ややこしくなりますが、「般若心経」というお経はひたすら「空」を説いております。この世の全て(森羅万象)は、突き詰めると「空」(滅する)であるのだと。「空」であるが由に「有」(存在する)であるのだと説いているのです。
故に(死を問いとしてそれに足る生き方)が必要であるのだと説いているのです。
肉体は日々衰えていきますが、創造性志向に加齢はありません。使えば使うほど若返るのです。私は授業の中で仏画に関連した「法」を説きます。お釈迦様ってどんな人、観音様はどんな仕事をする人、など…施設では宗教活動は禁じられていますが、これらの話は許可されています。ですから受講生の仏画には暖か味があり、皆様はつらつとしていらっしゃいます。即ち、仏画に心が表現されるのです。
教室の今後の在り方・方向性はグローバルに世界に発信して行くことです。
壮大で夢のある事ではないでしょうか。これからのカルチャーは、先生が上から教え、生徒が下で習うという上から下への関係ではいけません。
カルチャーも教育の一環であるならば教育は共育です。これがこれからのカルチャーの方向性だと思うのです。「創意」「工夫」「実行」「反省」このサイクルが創造性なのです。重く苦しい苦労が大きければ、その後に隠れている成功はきっと大きいはずです。創造性とはそういう事なのです。
やはり仏門の心得のある方はスケール感が違うのだと感じられるキーワードでした。絵を描くことを楽しんでいるだけで一つの世界がひとまず完結しますが、実はもっと大きな流れの中ではある影響を与えているのかもしれない…とロマンがありますね。
―先生ご自身の制作活動について、影響を受けられた人物、尊敬している人物はいますか?
おります。「真に愛すること」を教えてくれた方です。心の深い所にいつもしまっております。
―僧侶の資格を取られる前もファッション業界など様々な業種で活躍されたり、沢山の人生経験をお持ちの先生でいらっしゃいますが、小さい頃はどんなお子さんだったのでしょうか。
気の弱いボーっとした子供でした。
―僧侶になる決心がついたエピソードとして、東南アジアでの滞在中に目にした、中絶した我が子へ毎日祈りを捧げる売春婦の女性たちに対して自分もお経のひとつでもあげられたら、というお気持ちがあったとお聞きしました。「周りの人や物事を変えたい!」という思いが、先生にとって行動を起こす原動力なのでしょうか。
自らの生涯は寿命として決まっております。只、それがこの瞬間見えていないのですから、安心し大きな油断をしてしまうのでしょうね。
私は自分の限られた生涯に於いて何が出来るのかを、またこの世に生れて来た意味・価値観を知りたいのです。原動力も創造性の大切さもここにあるのです。
仏画に限らずひょんなことから始めた習い事が、生涯通してのめり込むようなライフワークになってしまう可能性だって大いにありますし、さまざまな出会いを大切にしていきたいと前向きな気持ちになった取材でした。
お教室の皆さんも、今後どんな方向に進んでいかれるのか非常に楽しみです!
廣瀬先生、どうもありがとうございました。
そんな廣瀬先生率いるチャルマティ仏画教室のみなさんが、インタビュー中にも話題に上がりましたように来年1月から開催されるエイズチャリティー美術展に出展されるそうです。
個性溢れる美しい仏画を一気に鑑賞できるチャンスですので、お時間のある際にぜひ足を運んでみてはいかがでしょう。
<チャルマティ仏画教室の情報はこちら>
http://www.geijutsumura.net/learn_detail_l0000436.html
<Heart Art in TOKYO 2014 ~第17回エイズチャリティー美術展~>
開催会期:2014年1月23日(木)~2月3日(月) ※1月28日(火)休館
開催会場:国立新美術館(東京都港区六本木7-22-2)
主 催:一般社団法人 Heart Art Communication
http://h-a-c.net/future/domestic_exhibition.html