クラシックチェアの制作をしているI.S.U.HOUSE上柳代表の上柳征信。ロココスタイルの椅子を伝統的工法で制作、又日本の家屋にマッチするスツールチェアを制作して、最近三越デパートや家具の展示会等で発表して人気を博している。
制作だけでなく椅子作りの教室、ダイニングチェアの修復ワークショップなどと積極的に活動している上柳氏に話を伺った。
―最近積極的に展開されていますが、平成19年に黄綬褒章受賞されたお父様の上柳博美氏から会社を引き継がれたのはいつですか?
昨年11月からです。つい最近です。昨年はイギリスの椅子作りの勉強に行き、それぞれの国の作り方みたいなものを学びました。プロセス、アプローチの仕方は違うのですが基本、椅子を長く使う、使えるということが根本にあります。
クラシックチェアは確かに高いのですが、良いものを認知してもらう為に自分が積極的に動いて作品を見てもらっています。
―クラシックチェアの代表的なロココ調の椅子などを作っていますが、その特徴を教えて頂けますか?
ルイ15世時代の装飾様式がロココで1720年から60年頃まで流行しました。 ロココの語源は岩石ロカイユあるいは、ロカイユ装飾はイタリアの貝殻装飾に由来して主要部分に貝殻などをモチーフにしていてことで、それでロココ調と言われているらしいです。サロン文化最盛期で猫脚に張りぐるみの肘掛け椅子<フォトゥーユ>に代表される、椅子の黄金期だったそうです。この椅子が実に現代まで使える程しっかりした作りなんです。
木工、彫刻、塗装、布張り、それぞれの職人がいて、最後が布張りです。バネを入れてヤシの繊維、そして馬毛でそれを形作ってから幾重にも幾重にも縫って形を作っていくのです。形が崩れ難くなるんです。全部で30工程ぐらいあります。
お父様の博美さんの本で、椅子を『張る』に書かれていたのですが、この半世紀の間に、時代は大きく変わって、私たちの身の回りにはたくさんの物が溢れるようになった。物に対する価値観も随分と変わった。海外の人件費の安い工場で大量に作られた物も、特殊な技能を持つ人間がコツコツと手作りする一品製作の物も、同じ土俵に並べられ<消費者>が選ぶ時代になった。いいか悪いかを吟味する以前に、高いか安いかが選択の基準として幅をきかせるようになった。手間をかけて作られたものにとっては、分が悪い時代だ。
けれども、そればかりではないようにも思う。私の工房では、十数年前から『椅子張り教室』を開くようになった。ある時期から<私も自分でこんな椅子を作ってみたい>という人たちが現れて、集まるようになったのだ。プロのはそう簡単に指導しない私だが、趣味で作りたいなら話は別で、毎月全国から集まる十数人の生徒さん達と、椅子作りを通して楽しい時間を過している。どんな物でも手軽に買える時代だからこそ、自分の手で本物を作りたい、愛着を持って長く使える物を側に置きたい、という気持ちを持つ人が増えているのではないかと感じてる。
確かに物に溢れ、手軽に何でも手に入る中で、自分自身で一生ものを作ってみるのはとても魅力的である。
―椅子作り教室、椅子の完成までどのくらいかかるのですか?
結構今来ている人たちは仕上がって来て20人程いた人が完成して12人ほどになっています。
2脚目という人もいます。月1回で12回程度、早い人で8回程度。布選びは女性に人気です。フランス製の布だけですが、ここにだけにしかないものなので結構人気です。
http://isuhouse.com/kousyu.htm
この時代の椅子は如何に女性を綺麗に見せるか!?ということが大切なので木工や彫刻の曲線と布地の色合いがとても美しく、特徴的です。手軽なもので一日フットスツール教室もやっています。これはすぐ出来ます。金額的にも手頃です。一日のワークショップでも四角いものなら出来ます。丸いのは少し難しいですね。手軽に出来るものと約一年掛けて作るものと両極端なので、この中間くらいの物も考えています。
―これは一度参加して作りたいですね。自分のオリジナルフットスツールが作れて、リーズナブルな授業料、やってみたい。最近は毎週色んな所で展示されたり、実演したりで注目されていますね。
若い世代の家具作りの人たちと一緒に仕事することが増え、刺激を受けながら外に向って発信してます。楽しいこと好きなので、楽しいと思うことはどんどんやって行こうと思っています。職人気質ではないですが、今そう言う職人を目指そうとする人も増えていますよね。色んな分野でも職人的な人を目指す雰囲気が出て来て、一緒に仕事していて楽しいです。
新宿駅西口で職人さんたちの展示会があり、見に行きましたが布団屋さん、石屋さん、印鑑屋さんと色んな職人さんたちが集まっていて面白かったです。
―椅子の歴史、スタイルなどの話をしていると面白い話がどんどん出て来て楽しいのですが、それは多分ホームページを呼んで戴いて、興味ある人は参加してほしいですね。
ロココ調の全盛期はだいたい270年程前です。その当時の椅子がまだ使えるのです。
そして全て大地に戻せる物で作るので、今言われるエコな物なのです。
この頃の椅子はバネを入れ、バネを力をへッシャン、麻の布を被せ、その上に椰子の繊維を詰める。その上に馬毛を詰める。そして下張りをして、最後に布を張る。背中も馬毛なので、通気性などもいいです。そして何よりも自分の体の形になってくる。体が椅子を選ぶようになってくるのです。
―大変そうですが、話を聞いていると作りたくなります。日常的に使うダイニングチェアの修理教室も興味あります。
これが出来るようになれば家のダイニングチェアの修理も自分で出来るようになります。今の所ここでしかやっていませんが、これは出張一日教室などもできると思うので、希望があれば連絡もらって開催可能です。
―家の近くのカフェで今度開催を考えますので協力して下さい。
精力的に動き回る上柳氏。ほぼ毎週色んな所で展示会やワークショップを開催している。
ホームページでチェック出来るので興味のある人は是非チェックを!!