レオナルド藤井さんインタビュー

原点から原点へ

「絵が大好きだ」と、屈託のない笑顔で胸を張る肖像画家レオナルド藤井氏。著名人のポートレイトを中心に数多くの人物画を制作され、2012年5月に初の個展「Portrait Icon」を開催した。無邪気に「描くこと」を楽しむ肖像画家に話を伺うと、初個展を終えたばかりでも、その勢いは止まらなかった。

―早速ですが、レオナルド藤井さん。純日本人ですよね?

(笑)。私、通称「レオ」で通ってまして。まぁ、本名がありきたりなのと、あとダ・ヴィンチにあやかって「レオナルド」と名乗っています。絵が上手くなるかなぁって(笑)

レオナルド藤井さん画像

―お描きになるのは全て人物画ですね。

人を描くのが好きなんです。全部手描きです。

漫画からエディトリアル、そしてイラストレーションへ

―もともと絵を描くのがお好きだったのですか?

そうですね。「イラスト」って意識はなくて、絵全般が好きでした。
漫画から入ったり。小学校、中学校の教科書はもう漫画だらけ。聖徳太子に眼鏡描いたり、パラパラ漫画描いたり。今見るとすごい面白いんじゃないかと思います。そんなことばっかりやっていました。絵は子どもの頃から好きでしたね。

 

―学校では「セツ・モードセミナー」に通っていらっしゃってますね。

高校を出て、美大落ちちゃったんで(笑) どこか行かなきゃイケナイなぁーって思って。

―お辞めになって、九州・関西・東京を「転々とされてた」とか。

まず福岡に行きまして、知り合いのデザイン事務所を手伝ったり。いきなり社会に出ちゃった。その頃は無我夢中で「絵も描けてデザインもできる」みたいな感じで修行していました。

―最初は「イラスト」から入られたんですか? 「デザイン」からですか?

なんでも興味あったんで同時進行ですね。

レオナルド藤井さん画像

―その後「マガジンハウス」に腰を落ち着けられますね。

30代から雑誌業界に入りました。BRUTUSの時はエディトリアルデザイナーで、その頃は堀内誠一さんとか、新谷雅弘さんとか有名なディレクターの下でやっていました。アートディレクターはHANAKOと、あと、とある漫画雑誌などです。

―雑誌アートディレクターを経験されてからデザイン事務所を設立されて、今現在はデザインからイラストレーションやアートの方向に活動を広げられていますね。

雑誌や書籍を主に活動していたんですが、まぁ寂しい話ですが、紙媒体が下降気味になった、と(笑)。もちろん完全になくなってはいないけれども、MIXとはいえ、もうWEBの方が盛んですよね。そんな中「ここで一発、奮起しなけりゃならんだろう」ってんで「自分にはなにがあるか」と考えた。で、それがやっぱり「絵」だったんです。それで2008年、2009年くらいからまた描き始めました。それがまた面白くなったんですよ。もちろん今からでもMIXでやりたいんですけどね。

―「俺は絵だ!」という確信に至ったのはいつ頃ですか?

2010年くらいですね。つい最近なんです(笑)

初めての個展

―2012年5月29日から6月3日にかけて個展を開催されました。初めての個展ということですが、終えてみての感想はいかがですか?

レオナルド藤井さん画像

約1週間、正確にいうと6日だったんですけど。最初「短いかなー」と思ったんですけど、やってみるともう濃くて(笑)。終わったらもうクタクタでしたね。初めてだったので。
しかしまぁ、いつも家では平面で描いてますし、それを一同に展示して見るという経験がなかったんで、改めて自分の作品を並べて見るってのはいい経験でした。あと「額装の力」。普段はペラで適当に置いたり、壁にピンナップしたりしているんですけど、額に入れてちゃんと見る、っていうのも大切だなって思いましたね。
私としては一点描けば、高かろうが安かろうがその絵に合うような額でやりたいというのが本願なんですけど、実は今回のお話を頂いた時には時間的に余裕がなかったので、いろいろレンタル額とかを探しながら間に合わせました(笑)。

―新旧織り交ぜて様々な著名人をお描きになってますね。

私も結構いい年なんで(笑)。人生も後半に入ってきて、絵を描くにあたって自分が影響されたとかインスパイアされた人たちを描いてみるってのはどうかな?と。何百人何千人いるか分かりませんけど、思いつくままに何の制約もなく描いてますよ。肖像権とかは気にしながら(笑)。

 

―「この人描きたいな」と思うキッカケってどんなときですか?

写真家はフォトジェニックっていいますよね。なんかこう「撮りたいな」っていう衝動みたいなもの。例えば公園のベンチに座っている老夫婦とか、そこに鳩が来て、みたいな「画になる瞬間」っていうのがあるじゃないですか。私の場合は、長年温めた中でインスパイアされた人たちが絶えず脳裏に巡っているんです。ある意味フォトジェニックなんでしょうね。描きたいな、というのが常日頃からあるんです。あとまだ何百人もいますよ。

―結構描いたら「止まらない」?

そうですね。毎日でも描きたいです。
あと、今はデジタル時代じゃないですか。僕もMACを使っていろいろ仕事していますけど、やっぱり「手で描く」「身体で描く」っていうのは気持ちいいんですよね。マラソンとかでデトックスする、みたいな。身体ぶつけながら絵具をほとばしらせて、自分自身の浄化っていうか、そういう気持ちよさがありますね。
描いてる最中はドーパミンがブワァッと出ちゃって。好きな音楽かけながら。終わったら「描き切ったーっ」みたいな。
その感覚を忘れてたんですよね、しばらく。昔はそういう時間もあったんだろうけど。

人物を描く

―人物を絵にする時に、特に気にされている事は?

著作権と肖像権ですね(笑)
というのは半分冗談で。インターネットで素材になる画像を探しているんですが、画像に関しては山のようにありますから、そこから何をセレクトするか。ある意味楽しい仕事ですね。

―今後チャレンジしてみたいことをお聞かせください。

2009年くらいから鉛筆デッサン風の感じが好きでそういう絵を描いていたんですけど、今度の個展をやるにあたって油絵風の、正確にはアクリルガッシュの絵を描いたんですね。これが私にとっては初めての経験だったんですが、そのタッチが結構衝撃的で。2日くらいで描いたんですよ。大きさはF12号ってやつ。なので、それの4倍とか、もっと大きなものを描きたいですね。
家で描いていると、そんなに大きさは分からないんですよ。でも個展だと「この白い壁にこれはないんじゃない?」「もっとデカけりゃよかったな」って(笑)。そういう反省をして。それが今からの楽しみです。

音楽「奏でること」と「描くこと」

―先程のお話にも出ましたが、音楽活動もされていますよね。

はい。音楽はかなり好きですね。”原人クラブ”という即興バンドをやってます。

―「絵を描く」こと音楽との共通性って何だと思われますか?

クリエイティブってことですかね。ゼロから。僕の絵の場合、素材にネットを利用するので完璧にゼロとはいえないですが、音楽の場合はゼロですからね。僕のやりたい音楽ってプリミティブな音楽なんですよ。ちょっとコンピュータも使ったりしますが打ち込みではなくてネイチャー音。風の音とか、コオロギの鳴き声とか、アラブのコーランとか、お坊さんの声明とか。ナチュラルな、素晴らしいスピリチュアルな音をバックに自分たちの生演奏で音を被せていく、っていうようなことをやっています。

アートとのつきあい方

―レオナルド藤井さんにとってアートってなんだと思いますか?

「人生は短し、芸術は長し」ですかね。私の好きな言葉です。普遍的な美しさっていうのがいかに大切かということをいい得ていると思います。

―「これからアートを始めてみたいけど」「ちょっと興味はあるけどむずかしそう」と思っている方々に何かメッセージをいただけますか。

あまり考えずに(笑)。
たとえば絵の場合だったら、白紙に向かって身体をぶつけてもいいじゃないですか。例えばジャクソン・ポロックは絵の具を叩き付けて、それが彼の芸術。そんなの誰にも出来ますよ。でも「それにこだわった」というのがスゴい。

レオナルド藤井さん画像

だから「上手く描こう」とか「デッサン教室通おう」というのも一つの手ですけど、まず何も考えずインナーチャイルドみたいなものを取り戻して、もう一度ゼロから初めてみていいと思いますよ。子どもは適当に絵の具を塗りたくりますよね。それが気持ちいいんでしょ。そういう行為に飽きてくれば花を描いたり、山を描いたり。それでアウトドアに興味が行ったり(笑)。
気負いせずにやってみたらいいと思います。すいぶんエラそうですけど(笑)。

―ありがとうございました。では、最後におとなの芸術村をご覧いただいている皆様にご自身のお知らせをお願いします。

私は肖像画家って名乗っていまして、例えば、家にある古い写真を新しく油絵風に起こしたいとか、カラーのものをモノクロのデッサン風に描いてほしいとか、アルバムにしまってある貴重な写真をリペアしたいとか、そういうご要望があれば挑戦していきたいと思っていますので、どうぞ宜しくお願いいたします。

 

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